地球温暖化の影響で漁獲量が減少し、イワシの価格が高騰しています。
美味しいだけでなく、体に良いとされる脂質、EPA、DHAを含んでいます。
マイワシはタタキや酢の物に、ウルメイワシは干物に、カタクチイワシはオイル漬けにしたアンチョビに。
シラスはマイワシの稚魚。
身近な食材です。
 

でも気づいてほしいのです。
イワシはニシン亜目に分類される魚。
ということは、ニシンはイワシの仲間です。
ところが意外に使われていない。
 

ニシンより有名なのがカズノコ。
そうです、カズノコはニシンの卵。
親を超えてスターになった出来の良い子供です。
おせち料理には欠かせません。
子孫繁栄の象徴だとか。
 

でも気づいてほしいのです。
親のことも。
親あってのカズノコです。
子孫繁栄の元になるのは、当然ながら2人の親、二親(ニシン)です。
明治の終わりころ、北海道沿岸では産卵のため大群で現れるのが春の始まりの風景だった。
だから春告魚。
大漁のニシンは米の代わりに年貢に使われ「魚にあらず」の鯡(ニシン)の漢字ができたとか。
ニシン御殿も立ち並んだのです。
 

鮮度が良ければ刺身だって良し、オイルに漬けてアンチョビ風にするも良し、干物にすれば身欠きニシンに。
水分が減った分、栄養素が濃縮しています。
 

ぜひとも来年のお正月には、柔らかく戻した身欠きニシンを昆布巻きにして、カズノコの横に添えてあげてください。

 

 

151223-文教広報誌BP顔写真

笠岡誠一(かさおか・せいいち)

1967年、広島県生まれ。
文教大学健康栄養学部教授。
管理栄養士。
食品栄養学修士(東京農業大学)。
博士(農学)(愛媛大学)。


山之内製薬(現・アステラス製薬)健康科学研究所研究員、アメリカ国立衛生研究所(NIH)客員研究員を経て現職。専門分野は栄養学、食品化学。レジスタントスターチに早くから注目し、レジスタントスターチを増やした「ハイレジ食」の開発なども行う。小説「きみのハラール、ぼくのハラール」や映画制作「CHO-KATSU」など、多分野で活躍中。