食べた量(エネルギー)以上に運動すれば痩せていくはず。
これがカロリー理論ダイエット。
エネルギーの単位がカロリーだからそう呼ばれている。
でもね、運動後には食欲が増進。
疲れた体を修復するための仕組み。
そう簡単じゃあない。

脂肪が増えれば体重が増える。
脂肪とは油がタップリ詰まった細胞のこと。
炭水化物を食べたあと血液中の糖が細胞に入って脂肪になる。
そうだ!炭水化物を抜こう!
これが炭水化物ダイエット。
でもね、糖は大事な脳の栄養。
そう簡単じゃあない。

北米大陸の北側に住むイヌイット。
アザラシなどの魚の脂身を好んで食べるがいたって健康。
脂身をたくさん食べるのは良いことに違いない、脂身から作られたケトン体を積極的に使える体質になれば体に詰まった脂肪も減っていくはず。
これがケトン体ダイエット。
でもね、極度に増えたケトン体は危険、とのデータもある。
そう簡単じゃあない。

いやいや生き物としての人間らしい旧石器時代の食事を見なおそう。
当時は肥満なんてなかったはず。
野草や昆虫なんかも食べちゃおう。
これがパレオダイエット。
でもね、毎日実践できますか?
そう簡単じゃあない。

「ダイエット」とは生活習慣、生き方、日々の勤めといった意味もある。
議員による会議「国会」も指すようになった。
混迷するダイエット。
すべての人を健康に幸せに導くのは、そうそう簡単なことじゃあない、ようです。

  

 

151223-文教広報誌BP顔写真

笠岡誠一(かさおか・せいいち)

1967年、広島県生まれ。
文教大学健康栄養学部教授。
管理栄養士。
食品栄養学修士(東京農業大学)。
博士(農学)(愛媛大学)。

山之内製薬(現・アステラス製薬)健康科学研究所研究員、アメリカ国立衛生研究所(NIH)客員研究員を経て現職。専門分野は栄養学、食品化学。レジスタントスターチに早くから注目し、レジスタントスターチを増やした「ハイレジ食」の開発なども行う。小説「きみのハラール、ぼくのハラール」や映画制作「CHO-KATSU」など、多分野で活躍中。