「初がつを・銭とからしで・二度なみだ」。

江戸時代に読まれた川柳。

日本の南側から北上し、4月~5月が旬の初鰹(はつがつお)が人気で高値だった。

当時の物価を現代に換算すると、初鰹1本20万円を超えていたとか。

一方、北から南下し8月~9月が旬の、脂の乗った戻り鰹は人気が無かった。

鮮度低下につながる脂質が初鰹の約12倍。

ビタミンAは4倍も含まれているのに。

 

そもそも鰹は傷みやすい。

そこで登場したのが「焼きタタキ」。

ワラの火であぶった鰹にしょうゆやスダチの汁をかけて手でもみ込む。

当時、タタキと言えば塩辛。

鰹の内臓を細かくなるまで包丁でたたく酒盗(しゅとう)の意味。

区別が必要だった。

 

保存してでも食べたい。

そこで乾燥させたところ堅い魚になった。

漢字一文字で表現した魚になった。

当時は屋根の上に並べて干していた。

今でも見ることができる。

神社に行って見上げてほしい。

屋根の一番高いところに1本の太い大棟(おおむね)がある。

そこに垂直に並べられた鰹節を見ることができる。

鰹木(かつおぎ)と呼ばれている。

 

鰹節は和食の核。

アミノ酸の一周ヒスチジンが豊富。

脳に届いて満腹感を増すらしい。

日本には肥満者が少ない理由かもしれない。

今では刺身で食べられる。

食卓に並べた刺身、「いただきます」の前に無くなっていたり…まさに「猫に鰹節」である。

 

参考図書:食べ物はじめて物語(永山久夫著、河出文庫)

151223-文教広報誌BP顔写真

笠岡誠一(かさおか・せいいち)

1967年、広島県生まれ。
文教大学健康栄養学部教授。
管理栄養士。
食品栄養学修士(東京農業大学)。
博士(農学)(愛媛大学)。

山之内製薬(現・アステラス製薬)健康科学研究所研究員、アメリカ国立衛生研究所(NIH)客員研究員を経て現職。専門分野は栄養学、食品化学。レジスタントスターチに早くから注目し、レジスタントスターチを増やした「ハイレジ食」の開発なども行う。小説「きみのハラール、ぼくのハラール」や映画制作「CHO-KATSU」など、多分野で活躍中。