「勉強」と「学び」の違い

木村俊介

「東大中退」の木村俊介と申します……!

「日本よくなる応援」にぼくも筆を執ることになりました。

社会人大学・代表コンサルタントの桑名伸さんがぼくを紹介するときに、「この人、東大中退なんですよ」と言ってくれることが多いので、こちらでも、それを使わせていただきました(笑)。

この「日本よくなる応援」では、日本ならではのお客様との交流を大切にした「商売」の可能性を探っています。前回までは桑名さんが、「わかってくれている」「心の利益」などについて記してきました。

今回は、そんな桑名さんの近くで仕事をしている立場から、「商売」にも大きく関わる「学び」の話をお伝えしたいと思います。

大学中退と「学び」

これを書いているぼくは、はじめにお伝えしたように、東大を中退しています。

小学生の頃から自分のヒーローだった荒木飛呂彦さんや井上雄彦さん(漫画家で、ぼくは取材の仕事をしているのですが、のちにお二人ともにインタビューをさせてもらうことにもなりました)が大学在学中から仕事をはじめてそちらにすべて賭ける姿勢を作品を通して見てきて憧れていたため、大学時代にこれだと思う仕事を見つけられたら、そこに夢中になるのは自然だったのです。

ただ、人からは「ギャップ」として親しんでもらえるようです。

世界を見渡せば、スティーブ・ジョブズやビル・ゲイツ、マイケル・ジョーダンなども大学中退者であるように、ぼくの場合も21歳で自分の本を書いてデビューし、早めに仕事をはじめたからか、20代のうちに幸いにもそれぞれ50万部、40万部、30万部と売れたいくつかの本を書かせてもらう機会をいただきました。読者に喜ばれて。

「勉強」との違いは?

ここで「学び」の話なのですが、いま挙げた5人の表現者や経営者はいずれも、大学を途中で辞めたあとこそ、何十年もずっと深く学び続けています。「商売」の中で。

それが「お客さんの前での開発や発表」でもあるがゆえに、時代の「不安」や「不満」をありありと深く探究・表現できていたというのが、ぼくの見立てです。

社会人大学・代表コンサルタントの桑名さんはよく、「勉強じゃなくて学び」と言います。

あらかじめ答えのあるものを暗記し、クイズ大会のように競う「勉強」ではない。解決不可能にも見えて実社会ではいくらでも直面する課題への手がかりを見つけようとする「学び」が大事だ、と。

ぼくも、そうだよなと思ってきたのです。

勉強≠学び

早めに社会に出て、20代のはじめに「ほぼ日」というメディアの初期から成長期にフルコミットメントで携わらせてもらい、毎日15時間ぐらいは記事を書き、紙面を編集しておもしろかったのですが、とにかく毎朝毎晩、読者(お客さん)と一緒に風景の移り変わる中を登山しているような喜びと手ごたえを感じていました。温かさもあって。

「学び」の渦中に飛び込み、あらゆることがそれまで経験した何よりも興味深く、あらゆることに関する自分の考えが変わるような5年間ぐらいを経て、なんだかやっと大人になれた気がしました。

「学び」。それが前回まで「日本よくなる応援」で記されてきた「わかってくれている」や「心の利益」にも通じる、いまの時代にこそ人が必要としているものだと考えるのです。

「道」を取り戻す学び

では、「学び」の何がいまの時代に必要なのか。

いまは、ほとんどがデジタル化され、数字とスペックで勝ち負けが競われ、どれだけ刺激的かを盛る「情報依存社会」になっています。

カスタマーもビジネスの当事者も支払いクリックだけする奴隷として「餌食」になりかねない。

「学び」には、そうならないでいられるかもしれない手ごたえがあるのです。

つねに切り貼り可能なデジタルの部品として、自分たちまでブツ切りにされた「誰でもいい存在」になりつつある。

そんな時代に、アナログ(連続的な、割り切れないもの)のような「道筋(プロセス)」を自分たちなりにつくって辿ることができるのが、「学び」だと思います。

うまくいかなきゃいけなくて、手段は何でもいいからドーピングすればいいというのではない。

うまくいかないこと自体が当たり前で、そこへの対処や自分たちらしい居場所を構築し続けて、味わいとしてお客さんと商品との間に「けもの道」をつくる。

それで喜ばれるのが「商売」の「学び」とでもいうような。

仕事の現場における「学び」を取材すると、いつもかならず、出会ってきた人への愛情に触れられます。

「ありがとう」「ごめんなさい」と感謝と修正を積み重ねながらいろんな人に出会ってきた温かい喜びを、まるごと自分なりの道筋にできる。

そんな「学び」の中に、いまの時代にも「よくなれる」きっかけがあるように思えてならないのです。自発的なところに。

「勉強」は、ムダではありません。でも、それだけなら「間違いのないように」と大勢に従うばかりの受け身にもなりかねない。「商売」なら、そこに向き合えます。

いまの時代には、まだ誰も解決できていない問題を問い、矛盾だらけの現実を読み解く「学び」が必要で、それが人やお客さんや自分自身に「喜び」を与えてくれるのではないでしょうか。

そんな「学び」を、この「日本よくなる応援」では今後も問い続けていきたいと思います。


木村俊介
取材者。1977年、東京都生まれ。著書に『インタビュー』、聞き書きに『調理場という戦場』(斉須政雄)などがある。

「勉強」や「学び」への皆さまのご意見お待ちしております。
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