食欲の秋と言うけれど、なぜ「秋」なのか?
おいしい食材が増えるから? さつま芋、秋刀魚、ぶどうなど。しかし、夏にはトマト、ナス、アジ、春には新じゃが、ふき、さわらなどがある。どの季節にもおいしいものはたくさんある。

夏バテが解消するから? 確かに、暑い夏には食欲がなくなるもの。気温が下がり快適に過ごせれば食欲が出てくる。しかし、春もまた快適な季節。食欲の春とは言わない。

日照時間が短くなるから? 日光に当たると食欲が抑えられるとの研究結果がある。冬にかけて日照時間が短くなり、反比例するように食欲が増加するとの考えです。

また、日照時間が短くなると脳内の幸せホルモン「セロトニン」が減ってしまうとも言われている。セロトニンを増やすための簡単な方法は食べること。たくさんの量を食べる必要はない。満足度の高い食事をすることが大事です。

冬に向けて気温が下がるから? 体温はかなり厳密に一定に保たれている。外気温が下がれば体温を上げる必要がある。体温を上げるための簡単な方法は食べること。

食べた分のエネルギーをきちんと消費すれば太らない。一日に消費するエネルギーの半分以上が基礎代謝で使われる。基礎代謝が高ければ太りにくい。一年のうちで基礎代謝が最も低いのは10月だ、との研究結果がある。10月は食欲が増して痩せにくいのかも。秋には不思議もたくさんある。


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笠岡誠一(かさおか・せいいち)

1967年、広島県生まれ。
文教大学健康栄養学部教授。
管理栄養士。
食品栄養学修士(東京農業大学)。
博士(農学)(愛媛大学)。

山之内製薬(現・アステラス製薬)健康科学研究所研究員、アメリカ国立衛生研究所(NIH)客員研究員を経て現職。専門分野は栄養学、食品化学。レジスタントスターチに早くから注目し、レジスタントスターチを増やした「ハイレジ食」の開発なども行う。小説「きみのハラール、ぼくのハラール」や映画制作「CHO-KATSU」など、多分野で活躍中。